健康診断の種類と概要

健康診断の概要

健康診断の実施義務

健康診断とは、労働者の現在の健康状態を調べ、病気の早期発見や予防につなげるためのもので、労働安全衛生法66条により、事業者に対し健康診断の実施が義務づけられています。

さらに、常時50人以上の労働者を使用する事業所が定期健康診断等を実施した場合は、その結果を労働基準監督署へ報告をしなければいけないことになっています。

なお、健康診断を実施しなかった場合、事業主に対し罰則(50万円以下の罰金)が科されます。

健康診断の種類

事業者に実施が義務づけられている健康診断は、大きく分けて一般健康診断と有害な業務に常時従事する労働者等に対し行う特殊健康診断等があります。

一般健康診断

一般健康診断には、以下のものがあります。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
雇入時の健康診断常時使用する労働者雇入れの際
定期健康診断常時使用する労働者(次項の特定業務従事者を除く)1年以内ごとに1回
特定業務従事者
の健康診断
労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務(※)に
常時従事する労働者
左記業務への配置替えの際、
6月以内ごとに1回
海外派遣労働者
の健康診断
海外に6ヶ月以上派遣する労働者海外に6月以上派遣する際、
帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に
従事する労働者
雇入れの際、
配置替えの際

※労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務

  • 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務

特殊健康診断等

有害な業務に常時従事する労働者等に対し行う健康診断で、以下のものがあります。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
特殊健康診断特殊健康診断の対象となる業務に従事する労働者(※)雇入れ時、
配置替えの際、
6月以内ごとに1回
じん肺検診常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者(じん肺法第3条、第7~10条)雇入れ時、
配置替えの際
管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回
歯科医師による検診塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所に おける業務に常時従事する労働者(安衛則第48条)雇入れ時、
配置替えの際
6月以内ごとに1回

※特殊健康診断の対象となる業務に従事する労働者

  • 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者(有機則第29条)
  • 鉛業務に常時従事する労働者(鉛則第53条)
  • 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者(四アルキル鉛則第22条)
  • 特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)(特化則第39条)
  • 高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者(高圧則第38条)
  • 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者(電離則第56条)
  • 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者(除染則第20条)
  • 石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者(石綿則第40条)

健康診断の対象労働者

一般健康診断

一般健康診断の対象となるのは、フルタイムで働く正社員およびパートタイムなどの短時間労働者(週の所定労働時間が正社員の3/4以上)になります。ただし、短時間労働者については、契約期間等により実施が義務付けられている健康診断が異なります。

①無期契約または契約期間が1年以上の有期契約(契約更新により1年以上になる場合を含む)
⇒ すべての一般健康診断

②契約期間が6か月以上1年未満の有期契約(契約更新により1年以上になる場合を含む)
⇒ 特定業務従事者の健康診断

特殊健康診断

特殊健康診断については、契約形態および週所定労働時間にかかわらず、有害業務に常時従事する場合には実施することが義務づけられています。

健康診断の項目

雇入れ時の健康診断と定期健康診断の項目は以下のようになります。なお、定期健康診断については医師が必要ないと認める項目については省略をすることができます。

雇入れ時の健康診断(安衛則第43条)定期健康診断(安衛則第44条)
既往歴及び業務歴の調査既往歴及び業務歴の調査
自覚症状及び他覚症状の有無の検査自覚症状及び他覚症状の有無の検査
身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
胸部エックス線検査胸部エックス線検査(※2)及び喀痰検査(※2)
血圧の測定血圧の測定
貧血検査(血色素量及び赤血球数)貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※2)
血糖検査血糖検査(※2)
尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
心電図検査心電図検査(※2)

特殊健康診断等については、それぞれの健診ごとに特別な健康診断項目が定められているため、省略致します。

健康診断実施後の対応

事業者は健康診断を実施した後、以下の6点について取り組まなければいけません。

1.健康診断の結果の記録

健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなくてはなりません。(安衛法第66条の3)

2.健康診断の結果についての医師等からの意見聴取

健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。(安衛法第66条の4)

3.健康診断実施後の措置

上記2による医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。(安衛法第66条の5 )

4.健康診断の結果の労働者への通知

健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません。(安衛法第66条の6)

5.健康診断の結果に基づく保健指導

健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。(安衛法第66条の7)

6.健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告

健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。(安衛則44条、45条、48条の健診結果報告書については、常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診の結果報告書については、健診を行った全ての事業者。)(安衛法第100条)

一般健康診断の報告義務と健康診断個人票の保存期間
一般健康診断の種類報告の有無報告対象事業所健康診断個人票
保存期間
雇入時の健康診断不要5年間
定期健康診断必要常時50人以上の労働者を使用
特定業務従事者の健康診断必要常時50人以上の労働者を使用
海外派遣労働者の健康診断不要
特殊健康診断の報告義務と健康診断個人票の保存期間
特殊健康診断の種類報告の有無報告対象事業所健康診断個人票
保存期間
じん肺健康診断必要(※)特殊健康診断を行った事業所7年間
有機溶剤健康診断必要5年間
鉛健康診断必要5年間
特定化学物質健康診断必要5年間
一定の物質については30年間
電離放射線健康診断必要30年間
高気圧作業健康診断必要5年間
石綿健康診断必要40年間

【参考資料】
 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう(厚生労働省)

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