労働条件通知書の概要と記載事項
労働条件通知書の概要
労働条件通知書とは?
労働条件通知書とは、賃金や労働時間などの労働条件を記載した書面のことで、事業主が労働者と労働契約を締結するときに交付します。
なお、この労働条件通知書は、労働基準法第15条で事業主に対し労働条件を書面で明示することを義務付けているため、労働契約を締結するときは必ず作成し労働者に交付しなければいけません。
労働条件通知書の役割
1.トラブルの防止
口頭で労働条件の説明を行うと、書面で明確にすることで、労使間の認識のズレやトラブルを防ぎます。
2.労働者の保護
労働条件を書面で確認することで、不当な条件で働かされることを防ぎ、労働者の権利を守ります。
雇用契約書との違い
労働条件通知書と雇用契約書は、どちらも労働条件に関する書類ですが、労働条件通知書は法律で企業に交付が義務付けられている書類に対し、雇用契約書は双方の合意を証明する書類で作成・交付義務はありません。
また、労働条件通知書は企業側から労働者へ一方的に通知する書類であるのに対し、雇用契約書は二通作成し、それぞれの署名・押印を行ったうえで、双方が保管するものとなります。
なお、労働条件通知書と雇用契約書は、「労働条件通知書兼雇用契約書」として一体化して交付することも可能となっています。主な違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | 労働条件通知書 | 雇用契約書 |
|---|---|---|
| 法的義務 | 交付義務あり | 法律上の作成・交付義務はない |
| 目 的 | 労働条件を労働者に明示する | 労働契約の内容に双方が合意したことを証明する |
| 法的効力 | 契約としての拘束力はない | 民法上の契約文書として効力を持つ |
| 署名・押印 | 労働者側の署名・押印は不要 | 企業と労働者双方の署名・押印が必要 |
| 対象者 | すべての労働者 | 企業と労働者 |
労働条件通知書に関する事項
労働条件通知書交付の対象者
正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など、全ての雇用形態の労働者が、労働条件通知書交付の対象となります。
労働条件通知書交付のタイミング
新規採用時だけでなく、有期雇用契約の更新時や定年後の再雇用時にも労働条件通知書の交付が必要となります。
労働条件通知書の明示方法
原則として書面での交付が義務付けられています。ただし、労働者の希望があれば、メールやFAXでの明示も可能です。
保存期間
労働条件通知書(雇用契約書)は、労働基準法により5年間の保存が義務付けられています。ただし、現在は経過措置により3年間の保存でも問題ありません。
労働条件の明示義務に違反した場合の罰則
労働条件の明示義務に違反した場合、事業主は30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法120条1号)。 また、パートタイマーや有期雇用労働者への明示を怠ると、10万円以下の過料に処されることもあります(パートタイム・有期雇用労働法31条)。
労働条件通知書の記載事項
労働条件通知書の記載事項には、労働基準法により必ず明示しなければならない事項(絶対的明示事項)と、定めがある場合に明示が必要な事項(相対的明示事項)があります。
絶対的明示事項
書面で必ず明示しなければならない項目になります。絶対的明示事項は以下の6つになります。
絶対的明示事項
- 労働契約の期間
- 有期労働契約を更新する場合の基準
- 就業場所と業務内容
- 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 等
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切日と支払日、昇給
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的明示事項
定めがある場合に明示が必要な項目になります。相対的明示事項は以下の8つになります。
相対的明示事項
- 退職手当(退職金)に関する事項
- 臨時の賃金、賞与、最低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
- 安全・衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- 休職に関する事項
労働条件通知書の書式例

【参考資料】
・労働条件通知書(厚生労働省HP)
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