カスハラの定義と事業主の義務
- 0.1. カスタマーハラスメントの定義
- 0.1.1. 1.顧客等とは?
- 0.1.2. 顧客等の具体例
- 0.1.3. 2.社会通念上許容される範囲を超えた言動とは?
- 0.1.4. 3.労働者の就業環境が害されるとは?
- 0.2. 社会通念上許容される範囲を超える言動
- 0.2.1. 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
- 0.2.2. 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
- 0.3. カスタマーハラスメントの判断基準
- 0.3.1. カスタマーハラスメントの判断基準
- 0.3.2. 社会通念とは?
- 0.4. 事業主が講ずべき措置
- 0.4.1. 1.カスハラを防止するために事業主が講ずべき措置
- 0.4.2. 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
- 0.4.3. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 0.4.4. 事後の迅速かつ適切な対応
- 0.4.5. 職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
- 0.4.6. 併せて講ずべき措置
- 0.4.7. 2.事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
- 0.4.8. 3.他の事業主の講ずる雇用管理上の措置に関する協力(努力義務)
カスタマーハラスメントの定義
労働施策総合推進法では、職場におけるカスタマーハラスメントについて、以下のように定義しています。
カスタマーハラスメントの定義
職場のカスタマーハラスメントとは、
職場において行われる①~③の要素全てを満たす行為をいいます。
- 顧客等の言動であること
- 社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
- 労働者の就業環境が害されること
1.顧客等とは?
「顧客等」とは、顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある潜在的な顧客も含む。)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む。)その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者を指し、以下の者等が含まれます。
顧客等の具体例
- 事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者
- 事業主の行う事業に関する内容等に関し問い合わせをする者
- 取引先の担当者
- 企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者
- 施設・サービスの利用者及びその家族
- 施設の近隣住民
2.社会通念上許容される範囲を超えた言動とは?
「社会通念上許容される範囲を超えた言動」とは、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものを指します。(具体例については、次の項目をご覧ください。)
この判断に当たっては、厚生労働省の指針では様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)との関係性等)を総合的に考慮することが適当であるとしています。
また、「言動の内容」及び「手段や態様」に着目し、総合的に判断することが適当であり、「言動の内容」「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でもこれに該当し得ることに留意が必要であるとしています。
3.労働者の就業環境が害されるとは?
「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、厚生労働省の指針では「平均的な労働者の感じ方」、すなわち同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当であるとしています。
なお、当該言動の頻度や継続性は考慮する必要はありますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動でも、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じ、就業環境を害する場合があり得ることに留意が必要であるとしています。
社会通念上許容される範囲を超える言動
言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるものには、以下のようなものがあります。
社会通念上許容される範囲を超える言動の内容
- そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
- 性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること
- 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
- 契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること
- 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
- 契約金額の著しい減額の要求をすること
- 不当な損害賠償要求
- 商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること
手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるものには、代表的なものとして以下の5種類があります
1.身体的な攻撃(暴行、傷害等)
身体的な攻撃(暴行、傷害等)の具体例
- 殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと
- 物を投げつけること
- わざとぶつかること
- つばを吐きかけること
2.精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
精神的な攻撃の具体例
- 店舗の物を壊すことをほのめかす発言やSNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと
- SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報の投稿等をすること
- 労働者の人格を否定するような言動を行うこと(相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うことを含む)
- 土下座を強要すること
- 盗撮や無断での撮影をすること
- 労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の者に暴露すること又は当該労働者が開示することを強要する若しくは禁止すること
3.威圧的な言動
威圧的な言動の具体例
- 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること
- 反社会的な言動を行うこと
4.継続的、執拗な言動
継続的、執拗な言動の具体例
- 同様の質問を執拗に繰り返すこと
- 当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること
- 同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること
5.拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
拘束的な言動の具体例
- 長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること
これらの例は限定列挙ではありません。また個別の事案の状況等によって判断が異なることもありえますので、事業主の方は十分留意して、カスタマーハラスメントに該当するか否
か微妙なものも含め、広く相談に対応する等適切な対応をするようにしてください。
カスタマーハラスメントの判断基準
カスタマーハラスメントの判断基準
顧客等の言動がカスタマーハラスメントであるか判断する際は、以下の観点から判断を行ってください。
カスタマーハラスメントの判断基準
- 顧客等の言動に妥当性はあるか
- 社会通念に照らして、その手段・態様が許容される範囲であるか
1.顧客等の言動に妥当性はあるか
顧客等の主張について、まずは事実関係を確認し、自社に過失がないか、根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当かどうかを判断します。
2.社会通念に照らして、その手段・態様が許容される範囲であるか
顧客等の言動の妥当性の確認と併せて、その要求を実演するための手段・態様が社会通念に照らして許容される範囲であるかを確認します。
社会通念とは?
社会通念とは、社会一般に広く通用している考え方・常識を指す言葉で、法律の条文のように書面で明確に定められていないことが多い点が特徴です。
事業主が講ずべき措置
令和7年に改正された労働施策総合推進法において、カスタマーハラスメント(※)について事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。
労働施策総合推進法
(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第33条 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものによりその当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
1.カスハラを防止するために事業主が講ずべき措置
職場におけるカスタマーハラスメント(以下カスハラ)について、事業主が必ず講じなければならない具体的な措置の内容は以下のとおりです。
事業主の方針等の明確化および周知・啓発
- 職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
- 職場におけるカスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること
相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること
- 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
事後の迅速かつ適切な対応
- 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
- 職場におけるカスハラが生じた事実を確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
- 再発防止に向けた措置を講ずること
職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
- 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備すること
併せて講ずべき措置
- 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知すること
- 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
2.事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
労働者が職場におけるカスタマーハラスメントについての相談を行ったことや、雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。
3.他の事業主の講ずる雇用管理上の措置に関する協力(努力義務)
自社の労働者が、取引先等の他社の労働者にカスタマーハラスメントを行う場合もあり得ます。
このため、他社から、自社の労働者の他社の労働者に対するカスタマーハラスメントの事実確認や再発防止といった他社の雇用管理上の措置の実施に関して必要な協力を求められた場合に、事業主はこれに応じるよう努めることとされています。
他の事業主の講ずる雇用管理上の措置に関する協力(努力義務)
- 事業主は、他の事業主からの協力の求めに応ずるように努めること。
- 事業主は、他の事業主からの協力の求めに応じて、労働者へ事実関係の確認等を行うに当たっては、これに協力した労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いを行わない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
- 事実関係の確認により、自社の労働者が、他社の労働者に対し、カスタマーハラスメントを行ったことが確認できた場合においては、事業主は就業規則等に基づき、行為者である自社の労働者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。
【参考資料】
・カスタマーハラスメントリーフレット(厚生労働省)
・カスタマーハラスメント防止指針(厚生労働省)
・ハラスメント対策の総合情報サイト あかるい職場応援団(厚生労働省)
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