ハラスメントの種類と概要

ハラスメントとは?

ハラスメントとは、相手の意に沿ぐわない言葉や行動によって、その相手が不快な思いをしたり、不利益を受けることをいいます。

この時、ハラスメントの行為者に相手を不快にさせる意図があったかどうかは関係なく、たとえ無意識な言動であっても、ハラスメントに該当する可能性があります。

したがって、ハラスメントを起こさないためには、各自がハラスメントについて理解をし、日頃の言動に注意をする必要があるといえます。

職場におけるハラスメントの種類

ハラスメントには様々な種類があり、全てのハラスメントを紹介することは難しいため、ここでは職場における代表的なハラスメントを取り上げたいと思います。

法律で定義されたハラスメント

以下の5つのハラスメントについては、法律でハラスメントの具体的な要件が定義され、事業主にはハラスメントを防止するための講ずべき措置が定められています。
※ハラスメント名をクリックすると、各ハラスメントの詳細ページに移ります。

ハラスメント名法律名
パワーハラスメント(パワハラ)労働施策総合推進法
セクシャルハラスメント(セクハラ)男女雇用機会均等法
妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(マタハラ、パタハラ、ケアハラ)男女雇用機会均等法
育児・介護休業法
カスタマーハラスメント(カスハラ)労働施策総合推進法
就活ハラスメント(就活セクハラや就活パワハラなど)労働施策総合推進法
男女雇用機会均等法

その他職場におけるハラスメント

職場におけるハラスメントは、法律で定められたハラスメントのほかに以下のようなものがあります。

ハラスメント名概 要
モラルハラスメント
(モラハラ)
道徳や倫理に反する行為や言動によって、相手に不快感や精神的苦痛を与えること
ジェンダーハラスメント性別によって社会的役割が異なるという固定観念に基づき、嫌がらせや差別を行うこと
アルコールハラスメント
(アルハラ)
飲み会への参加・不参加や、飲酒を強要するなど飲酒に関する嫌がらせや迷惑行為
リストラハラスメント
(リスハラ)
辞めてほしい(リストラしたい)労働者に対して嫌がらせを行い、自主退職を促す行為
テクノロジーハラスメント
(テクハラ)
ITに関する知識に乏しく、IT機器やネットワークなどの取り扱いが不得手な労働者に対して行われる嫌がらせ

ハラスメントのレベル

ハラスメントはその悪質性などに応じて、以下のレベル(段階)に分けることができます。なお、上位レベルのハラスメントに該当する行為は、下位レベルのハラスメントにも該当します。

刑法上の犯罪

刑法上の犯罪に該当する行為をした者は、逮捕・起訴されたり、刑事罰を受けたりする可能性があります。ハラスメントの中でも、きわめて悪質性が高い類型の行為といえます。

刑法上の犯罪に該当するハラスメントの例

  1. 暴行罪(刑法208条)
  2. 傷害罪(刑法204条)
  3. 名誉毀損罪(刑法230条)
  4. 侮辱罪(刑法231条)
  5. 強制わいせつ罪(刑法176条)

民法上の不法行為

ハラスメントによって被害者の権利を侵害し、損害を与えた場合には不法行為に該当します(民法709条)。不法行為に当たるハラスメントを受けた被害者は、加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。

民法上の不法行為に該当するハラスメントの例

  1. 被害者を侮辱して、精神的なダメージを与える行為
  2. 度重なる恫喝やセクハラによって、被害者をPTSDに陥らせる行為 など

労働法上のハラスメント該当行為

パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラ、就活ハラスメントについては、それぞれ規程する法律により、事業主が講ずべき措置が義務付けられています。

もしハラスメントの防止・対応に関する措置を講じる義務を怠った場合、厚生労働大臣による行政処分の対象になる可能性があります。

企業秩序違反行為

就業規則等により、法令を上回る厳格なハラスメント防止基準などを定めた場合には、企業はその基準に従ってハラスメントに該当するかどうかを判断しなければいけません。

したがって、就業規則等で定められたハラスメント防止基準に違反した従業員に対しては、懲戒処分などの対応も検討する必要があります。

ハラスメントが企業にもたらすリスク

企業がハラスメント対策をせず、社内外にハラスメントが横行してしまった場合、以下に記載するリスクが発生する可能性があります。

1.従業員の生産性とモチベーションの低下

社内等においてハラスメントが横行し、対策が取られないと、被害者はストレスや不安を抱えたまま仕事をすることになり、生産性が低下します。また、ハラスメントの行為が継続されることにより、職場環境が悪化し、周囲の従業員のモチベーションも低下します。

2.優秀な人材の流出

ハラスメントにより社員のモチベーションが低下すると、優秀な人材がどんどん辞めていきます。また、企業は新たに人材を採用し教育をしなければいけないため、採用コストや生産面でも悪影響を及ぼすことになります。

3.多額の損害賠償の発生と社会的信用の低下

ハラスメントにより、被害者がうつ病などの精神疾患を発症した場合は、安全配慮義務違反または使用者責任に基づき、損害賠償を負うことになります。また、万が一被害者が自殺をしてしまった場合は、多額の損害賠償を負うだけでなく、社会的な信用も失うことになります。

4.経営存続の危機

ハラスメントにより自殺者などの被害者を出し、そのことがメディアなどで報道されると、企業イメージは失墜し、商品やサービスの売上にも大きく影響します。また、悪い評判が広まり、採用活動においても優秀な人材が応募を敬遠するなど、経営活動に支障が生じ、最悪倒産に至ります。

ハラスメントが発生する要因

ハラスメントが発生する要因は多岐にわたりますが、大きく分けると個人の問題と職場などの組織の問題に分けることができます。

ただし、一つの要因によってハラスメントが発生するというよりも、これらの要因が複合的に絡み合い、ハラスメントを発生させるため、 個人と組織の問題の両面から問題に対応する必要があるといえます。

個人間の問題1.ハラスメントへの意識の欠如
2.個人の価値観・考え方の違い
3.アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)
4.マネジメント能力不足
5.性別役割分担意識
6.倫理観の欠如
職場環境・組織風土の問題1.上下関係が厳しい
2.過度な目標の設定
3.ミスが許されない雰囲気
4.一部の人に権限が集中
5.業務量の配分が不適切
6.雇用管理上の問題

ハラスメントを発生させないための対策

ハラスメントを防止するためには、まず、ハラスメントの種類や定義を理解し、職場全体でハラスメントに対する意識を高めることが重要です。また、コミュニケーションを活発化させ、風通しの良い職場環境を構築することが求められます。さらに、管理職は、適切なマネジメントスキルを習得し、部下への指導・育成を適切に行う必要があります。具体的には、以下の対策が有効とされています。

ハラスメント対策具体的内容
1.ハラスメントに関する
ガイドラインの作成・周知
職場におけるハラスメントの定義や対応について明確化する。
2.相談窓口の設置相談しやすい環境を整備し、被害者の早期発見と適切な対応を行う。
3.ハラスメント研修の実施ハラスメントに関する知識や理解を深めるための研修を定期的に実施する。
4.管理職の意識改革管理職がハラスメントの加害者にならないよう、意識改革を行う。
5.相談しやすい環境づくり相談しやすい雰囲気を作り、被害者が安心して相談できる体制を整える。
6.定期的なアンケート調査職場環境の実態を把握し、問題点を改善する。
7.再発防止策の徹底ハラスメントが発生した場合、再発防止策を徹底する。

これらの対策を継続的に実施することで、ハラスメントの発生を抑制し、より働きやすい職場環境を構築することが可能になります。

ハラスメントを防止するために事業主が講ずべき措置

その他、パワハラ・セクハラ・マタハラ等については、事業主に対しハラスメントを防止するための措置を義務付けています。

事業主の方針等の明確化および周知・啓発

  • 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  • 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
STEP
1

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  • 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
STEP
2

職場におけるハラスメントに関する事後の迅速かつ適切な対応

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  • 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)
STEP
3

併せて講ずべき措置

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
  • 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
STEP
4

【参考資料】
・ハラスメント対策の総合情報サイト あかるい職場応援団(厚生労働省)

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