セクハラの概要と事業主の義務
- 0.1. セクシャルハラスメントの定義
- 0.1.1. 職場におけるセクシャルハラスメント
- 0.1.2. 「職場」とは?
- 0.1.3. 「労働者」とは?
- 0.1.4. 「性的な言動」とは?
- 0.1.4.1. ①性的な内容の発言
- 0.1.4.2. ②性的な行動
- 0.2. セクシャルハラスメントの類型
- 0.2.1. ①対価型セクシャルハラスメント
- 0.2.2. ②環境型セクシャルハラスメント
- 0.3. セクハラを防止するために事業主が講ずべき措置と禁止事項
- 0.3.1.1. 男女雇用機会均等法
- 0.3.1. セクハラを防止するために事業主が講ずべき措置
- 0.3.2. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 0.3.3. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 0.3.4. 職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 0.3.5. 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
- 0.3.6. 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
- 0.3.7. 自社の労働者等が他社の労働者にセクシャルハラスメントを行った場合の協力対応
セクシャルハラスメントの定義
職場におけるセクシャルハラスメント
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクシャルハラスメントについて、以下のように定義しています。
職場におけるセクシャルハラスメントとは、
「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。
「職場」とは?
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。
「職場」の例
取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅、取材先、出張先、業務で使用する車中 など
勤務時間外の「宴会」などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。
「労働者」とは?
正規労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規労働者を含む、事業主が雇用する労働者のすべてをいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)についても規定が適用され、派遣先事業主は、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
「性的な言動」とは?
性的な内容の発言および性的な行動を指します。事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクシャルハラスメントの行為者になり得るものであり、また、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれます。
性的な言動の例
①性的な内容の発言
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を意図的に流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど
②性的な行動
性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強姦など
セクシャルハラスメントの類型
セクシャルハラスメントには、大きく分けて「①対価型セクシャルハラスメント」と「②環境型セクシャルハラスメント」の2つがあります。
①対価型セクシャルハラスメント
対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、その労働者が解雇、降格、減給される、労働契約の更新が拒否される、昇進・昇格の対象から除外されるなど、客観的に見て不利益な配置転換をされるなどの不利益を受けることをといいます。
①対価型セクシャルハラスメントの例 | 事業主から性的な関係を要求され、拒否をしたら、解雇された。 |
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出張中の車中で上司から腰、胸などを触られたが、抵抗したため、通勤に2時間もかかる事業所に配置転換させられた。 | |
事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたため、抗議をしたところ、降格させられた。 |
②環境型セクシャルハラスメント
環境型セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で見過ごせない程度の支障が生じることをいいます。
②環境型セクシャルハラスメントの例 | 事務所内で上司が腰や胸などを度々触るので、また触られるかもしれないと思うと仕事が手に付かず就業意欲が低下すること。 |
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同僚が取引先でプライベートな交友関係の性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流したため、そのことが苦痛に感じられて仕事が手につかないこと。 | |
労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。 |
セクハラを防止するために事業主が講ずべき措置と禁止事項
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクシャルハラスメント(以下セクハラ)について、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。
男女雇用機会均等法
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第1項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
セクハラを防止するために事業主が講ずべき措置
職場におけるセクシャルハラスメント(以下セクハラ)について、事業主が必ず講じなければならない具体的な措置の内容は以下のとおりです。
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 職場におけるセクハラの内容・セクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
- セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定めること。
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
1から3までの措置と併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
- 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
労働者がセクシャルハラスメントについての相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。
自社の労働者等が他社の労働者にセクシャルハラスメントを行った場合の協力対応
セクシャルハラスメントの行為者となるのは、被害者と同じ事業所に勤めている人とは限りません。他社の労働者から自社の労働者がセクシュアルハラスメントを受けた場合にも、事業主は雇用管理上の措置として、適切に相談に対応する必要があります。また、自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行う場合もあり得ます。
このため、他社から、自社の労働者の他社の労働者に対するセクシャルハラスメントの事実確認や再発防止といった他社の雇用管理上の措置の実施に関して必要な協力を求められた場合に、事業主はこれに応じるよう努めなければいけません。
【参考資料】
・職場におけるハラスメント対策パンフレット(厚生労働省)
・ハラスメント対策の総合情報サイト あかるい職場応援団(厚生労働省)
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