法定4帳簿の種類と概要

法定4帳簿の概要

法定4帳簿とは?

法定4帳簿とは、労働基準法で作成・保存を義務付けられている「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」「年次有給休暇」の総称のことをいいます。

表の中の帳簿名をクリックしていただくと、各帳簿のページへ移ります。

帳簿の種類労働基準法
労働者名簿労働基準法第107条
賃金台帳労働基準法第108条
出勤簿労働基準法施行規則第54条 等
年次有給休暇管理簿労働基準法施行規則第24条の7

法定4帳簿の役割と目的

法定4帳簿を作成する目的は、労働基準法を遵守し、労働者を適正に管理することにあります。具体的には、労働時間、賃金、有給休暇の状況を正確に把握し、過重労働の防止や適正な賃金支払いを行うことを目的としています。

また、労働基準監督署や年金事務所の調査では、労務管理状況を確認するために法定4帳簿の提出を求められることがあるため、作成をするだけでなく、いつでも提出できるようにしておく必要があります。

各帳簿の主な内容

帳簿の種類主な内容
労働者名簿従業員の氏名、生年月日、履歴、性別、住所などの基本情報を記載した帳簿です。
賃金台帳賃金の計算の基礎となる帳簿で、労働者の賃金計算期間、労働日数、労働時間、賃金、控除額などを記録します。
出勤簿従業員の勤怠状況を客観的に記録した帳簿で、出勤日、始業・終業時刻、休憩時間、労働時間などが含まれます。
年次有給休暇管理簿年次有給休暇の付与日、取得日、取得状況などを管理する帳簿です。

法定4帳簿の作成・保存に関する事項

様 式

法定4帳簿すべてにおいて、決まった様式は定められていません。労働基準法で定められた記載事項について、要件を満たしていれば任意の形式であっても問題ありません。

作成義務者

法定4帳簿の作成を義務付けられているのは、労働者を雇用する「使用者」になります。ここでいう使用者とは、事業主のことを指し、会社などの法人だけでなく、従業員を雇用する個人事業主も含まれます。

したがって、従業員を一人でも雇用していれば法定4帳簿の作成・保存を行わなければいけません(年次有給休暇管理簿については、年間10日以上の有給休暇が付与される従業員がいる場合のみ)。

作成単位

法定4帳簿は、原則として「事業場単位」で作成・保管する必要があります。ここでいう事業場単位とは、企業が「事業を行っている場所」のことを意味し、具体的には本社や支店、工場など、それぞれの場所のことを指します。

したがって、法定4帳簿を本社で一括して作成・管理をしている場合は、各事業所から法定4帳簿を確認できる状態にするか、もしくは本社分とは別に各事業所分の法定4帳簿を作成し、書面やデータ等で配布する必要があります。

作成対象者

法定3帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)については、正社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問わず、すべての従業員が対象となります。年次有給休暇管理簿については、年間10日以上の有給休暇が付与されるすべての従業員が対象となります。

ただし、派遣社員の場合は、有給休暇を付与する派遣元企業が管理簿を作成するため、派遣先の事業主は作成する必要はありません。

帳簿名作成対象者
労働者名簿雇用形態に関わらず雇用している全従業員
賃金台帳
出勤簿
年次有給休暇管理簿年間10日以上の有給休暇が付与される従業員

記載事項

法定4帳簿には、労働基準法でそれぞれ記載事項が定められており、それらの事項を記載した帳簿を作成する必要があります。各帳簿の記載事項は、以下になります。

労働者名簿の記載事項

  1. 労働者の氏名
  2. 生年月日
  3. 性別
  4. 住所
  5. 雇入れ年月日
  6. 従事する業務の種類
  7. 履歴
  8. 退職または死亡の年月日とその事由(解雇・自己都合など)

賃金台帳の記載事項

  1. 労働者の氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数
  7. 基本給・手当の種類とその額
  8. 控除項目とその額

出勤簿の記載事項

  1. 労働者の氏名
  2. 出勤日および労働日数
  3. 日ごとの始業・終業時刻と休憩時間
  4. 時間外労働を行った日付・時刻・時間数
  5. 休日労働を行った日付・時刻・時間数
  6. 深夜労働を行った日付・時刻・時間数

年次有給休暇管理簿の記載事項

  1. 基準日(各労働者に年次有給休暇を付与した日付)
  2. 日数(年次有給休暇の付与日数、取得済日数、残日数)
  3. 時季(労働者が年次有給休暇を取得した日付)

保存方法

法定4帳簿の保存方法は、紙媒体または電子データどちらでも構いません。ただし、労働基準監督官などから求められた場合は、いつでも提出・閲覧できる状態で保管をしておかなければいけません。

なお、電子データで保存をする場合は、労働基準法に定められた以下の3要件を満たしていることが求められます。

電子データで保存する場合の3要件

  1. 見読性(いつでも画面に表示し、印刷できる状態にしておくこと)
  2. 検索性(必要事項を直ちに特定・確認できるシステムにしておくこと)
  3. 完全性(誤って消去されたり、改ざんされたりしないように、データの保全に配慮すること)

保存期間

法定4帳簿にはそれぞれの帳簿について、保存期間が定められているため、各帳簿についてその期間保存をしなければいけません。なお、保存期間についてはもともと3年間でしたが、労働基準法の改正により、保存期間が5年間へと変更になりました。ただし、経過措置として当分の間は3年間となっています。

帳簿名保存期間
労働者名簿労働者の死亡、退職、解雇の日から5年間
ただし、経過措置として当面の間は3年間
賃金台帳最後の記入をした日から5年間
ただし、経過措置として当面の間は3年間
なお、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は7年間
出勤簿記録完結日(月末や賃金計算期間の末日)からから5年間
ただし、経過措置として当面の間は3年間
年次有給休暇管理簿当該期間満了後から5年間
ただし、経過措置として当面の間は3年間

罰 則

法定4帳簿の作成・保存について違反があった場合は、労働基準法に基づき罰則が科されます。ただし、違反が発覚した場合は、まず労働基準監督署から是正勧告がなされ、これに従わない場合に罰則が適用されるのが一般的です。 

帳簿名罰 則
労働者名簿30万円以下の罰金(労基法第120条)
賃金台帳
出勤簿
年次有給休暇管理簿年次有給休暇管理簿の作成・保存を怠った場合の直接的な罰則はありません。
ただし、従業員に年5日の有給休暇を取得させなかった場合は、
労働基準法第120条に基づき30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

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