割増賃金の種類と計算方法

割増賃金の概要

割増賃金とは?

割増賃金とは、会社が従業員に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させた場合や、法定休日または深夜(午後10時〜午前5時)に労働をさせた場合に、通常の賃金に一定の割増率を上乗せして支払う賃金のことをいいます。

この割増賃金は労働基準法37条で定められており、従業員に時間外労働、休日労働または深夜労働をさせた場合は、事業主に対し割増賃金を支払うことを義務付けています。

割増賃金の種類と割増率

割増賃金には主に3つの種類があり、その種類に応じて異なる割増率が適用されます。なお、複数の割増率が重複する場合は、それぞれの割増率を合算し、割増賃金の計算に使用します。

割増賃金の種類と割増率
適用される割増率の例

法定休日とは?

法定休日とは、労働基準法に基づき、使用者が労働者に対し、1週間に1回または4週間を通じて4回以上与えなければならない休日のことをいいます。この法定休日に労働をさせた場合は、休日労働となり、労働者に対し休日労働手当を支払う義務が発生いたします。

逆に法定休日以外の休日は「法定外休日」または「所定休日」と呼ばれ、この日に労働をしても休日労働とはなりません。ただし、法定外休日に労働をしたことにより、週の労働時間が40時間を超えた場合は、その超えた時間は時間外労働となり、時間外労働手当を支払う必要があります。

なお、法定休日を特定する場合は、特定された法定休日以外の休日が法定外休日となります。例えば、週休2日(土日)の会社において、日曜日を法定休日と定めた場合は、土曜日や祝日(日曜を除く)等が、法定外休日となります。

割増賃金の計算方法

割増賃金の計算式

割増賃金は「1時間あたりの賃金」 × 「対象の労働時間」 × 「各種割増率」で計算されます。

割増賃金の計算式
1.時間外労働手当

①法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき
 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 割増率 1.25

②時間外労働が1か月60時間を超えたとき
 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 割増率 1.50

2.休日労働手当

 1時間あたりの賃金 × 法定休日労働時間 × 割増率 1.35

3.深夜労働手当

①深夜(午後10時〜午前5時)に労働をしたとき
 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 割増率 0.25

②時間外労働が深夜(午後10時〜午前5時)に及んだとき
 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 割増率 1.50(1.25+0.25)

③法定休日労働が深夜(午後10時〜午前5時)に及んだとき
 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 割増率 1.60(1.35+0.25)

1時間あたりの賃金の求め方

1時間あたりの賃金とは?

1時間あたりの賃金とは、割増賃金を計算する際の基礎となる額のことで、その名のとおり従業員の賃金を1時間あたりの額に換算したものになります。

1時間あたりの賃金の算出方法

割増賃金を計算するにあたり、「1時間あたりの賃金」を求める必要があります。1時間あたりの賃金は、給与形態に応じて以下の計算式で求めます。

賃金形態1時間あたりの賃金の計算方法
時間給制特に計算の必要はありません。
日給制日給÷1日の所定労働時間
月給制月給(※)÷1か月平均所定労働時間(※次項参照)
出来高払制その他の請負制(出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額)÷総労働時間数

割増賃金の基礎となる賃金から除外できるもの

月給制の場合、各種手当も含めた月給の額を、1か月平均所定労働時間で割って1時間あたりの賃金額を算出します。

ただし、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給される手当等については、基礎となる賃金から除外することができます。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できるもの
  1. 家族手当(扶養手当)
  2. 通勤手当
  3. 別居手当、単身赴任手当
  4. 住宅手当
  5. 臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)
  6. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、割増賃金の基礎となる賃金から除外できるのは、家族数、交通費・通勤距離、家賃等に比例して支給されるものに限ります。

一律に支給される場合は、割増賃金の基礎となる賃金に含めなければいけません。

除外できる手当の具体的範囲

1か月平均所定労働時間の求め方

1か月平均所定労働時間とは?

1か月平均所定労働時間とは、年間で働いた総労働時間を12か月で割って算出される、1か月あたりの平均労働時間のことをいいます。この1か月平均所定労働時間は、主に月給者の1時間あたりの賃金を求めるのに使われます。

1か月平均所定労働時間の算出方法

1か月平均所定労働時間は、以下の計算式により算出します。

1か月平均所定労働時間の計算式

1年間の所定労働日数(365日※-年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
※うるう年は366日

1か月平均所定労働時間を算出するステップ
  1. 年間所定労働日数の算出 365日(うるう年は366日)から年間休日数を引きます。
  2. 年間所定労働時間の算出 年間所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けます。
  3. 月平均所定労働時間の算出 年間所定労働時間を12ヶ月で割ります。

1日の所定労働時間、年間休日とは?

1日の所定労働時間は、「所定の始業から終業までの時間」から休憩時間を引いて求めます。季節や曜日により1日の所定労働時間が変わる場合は、1年間で通算した所定労働時間を12か月で割ります。

年間休日とは、企業が就業規則などで定めた1年間の休日の合計日数のことをいいます。これには、労働基準法で定められた法定休日と、企業が独自に設定する法定外休日(祝日、夏季休暇、年末年始休暇など)が含まれます。また、休日が重なることもあるため、年間休日は毎年変わることになります。

1か月平均所定労働時間の計算例

割増賃金の対象となる労働時間の集計

割増賃金の対象となる労働時間の集計方法

毎月の割増賃金を計算するにあたり、割増賃金の対象となる労働時間を以下の種類ごとに集計する必要があります。

なお、時間外労働、休日労働、深夜業の各々の1か月の合計時間において、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げることが可能です。

割増賃金の対象となる
労働時間の種類
集計すべき労働時間
時間外労働時間
(割増率25%)
①と②の合計
①1日8時間を超えて労働した時間の合計
②1週40時間を超えて労働した時間の合計
(※1日8時間を超えて労働した時間は除く)
時間外労働時間
(割増率50%)
1か月の時間外労働が60時間を超えた時間
法定休日労働時間法定休日として定めた週1日または4週間に4日以上の休日に労働した時間の合計
深夜労働時間夜の22時から翌朝5時までの間に働いた時間の合計

振替休日と代休の違い

振替休日とは、事前に法定休日を別の労働日と入れ替える制度のことで、この場合もともとの法定休日は労働日となり、入れ替わった労働日が休日となります。この場合、本来法定休日だった日に労働をさせても、休日労働とはなりません。また、休日労働手当の支払い義務も発生いたしません。

振替休日に対し、代休は事前に法定休日を振り替えせずに休日労働を行わせ、後日代わりの休日を与えることをいいます。この場合は、休日労働に該当しますので、休日労働手当を支払わなければいけません。

労働時間の適用除外となる労働者

労働基準法第41条に定める特定の労働者については、労働時間や法定休日が適用されないため、それらの労働者については時間外労働手当や法定休日手当を支払う必要はありません。

ただし、深夜労働に対する割増賃金は除外になりませんので、深夜労働手当は支払う必要があります。

労働時間の適用除外となる労働者具体的業務内容
管理監督者事業の種類にかかわらず、監督または管理の地位にある方、または機密の事務を取り扱う方。経営者と一体的な立場で労務管理を行うため、労働時間などに裁量があるとされます。
監視・断続的
労働者
監視業務や断続的な労働に従事し、所轄の労働基準監督署長の許可を受けた労働者。
身体的・精神的緊張が少ないと判断される業務が対象になります。
農林水産業の
従事者
林業を除く農林水産業に従事する労働者。
天候や季節に労働時間が左右されやすいため、適用除外とされています。

管理監督者とは?

ここでいう管理監督者とは、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされており、「部長」「営業所長」といった肩書ではなく、実態により判断いたします。

例えば、「地位に応じた相応の賃金が支払われている」といった待遇とともに「部下の採用、給与の決定などの人事管理の権限を持つ」「出退勤時間が本人の裁量に任されている」といった立場にあることが必要です。

【参考資料】
・しっかりマスター労働基準法-割増賃金編-(厚生労働省リーフレット)
・割増賃金の基礎となる賃金とは?(厚生労働省リーフレット)

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